2021年3月5日、中小企業診断士の実務補習の2回目は大阪で受講した。
例年であれば、3月におこなう実務補習は「15日間コース」の3回目だけだが、この年は何故か大阪のみ「5日間コース」の追加募集があった。
1回目は地元の広島で受講したが、他県で受講することも考えていたので、迷うことなく応募した。
大阪は広島に比べて企業の数自体も多く、それに応じて多様な業種の企業があるだろうから、広島とは違った経験ができるのではないかと期待したからだ。
また、大阪で人脈がつくれれば、きっと将来広島でも役に立つはずだ。
結果的に、この決断がその後の診断士としての活動を大きく左右することになるとは、その時は全く思いもしなかった。
班長に就任
今回のチームは5人編成。
私以外はみんな関西在住者だが、その中に広島県出身者がいて驚いた。
しかも、彼の実家がわが家からそんなに遠くない。
意外と世界は狭いものだな、と感じた。
また、5名のうち、今回初めて実務補習を受ける者が3名、2回目の受講は現役大学院生のKくんと私だけ。
60過ぎたおっさんと息子よりも若い大学院生、、、
自然のなりゆきで、私が班長に就任した。
そして慣習に従い、班長の私が「経営戦略」と全体とりまとめをおこなうことになった。
じゃ、あとのメンバーの分担はどうするか?
前回の広島では、指導員の先生が予め担当部門を決めていたが、今回の指導員の先生は「班長さんが決めて」とのこと。
え、そうなんですか?
ならば、今回の診断先がお菓子をつくる製造業なので、「経営戦略」の他は、「マーケティング(商品開発含む)戦略」「生産戦略」「人事戦略」「財務戦略」としよう。
これをみんなで協議して担当割りを決めた。
やはり、ところ変わればやり方も変わるものだな。
班長さんのお仕事
実務補習の班長になると色々仕事がある。
担当割りが決まって、次の指示を待っていると、指導員の先生から「班長さんがどんどん進めてくださいよ」と・・・
そっか、大阪では班長が全部決めんといけんのじゃな。
じゃあということで、取り急ぎ午後からの診断先への質問事項を各担当ごとにまとめてもらう(広島では事前に担当が決まっており、当日までに質問事項を考えてくるように指示があったのだが)。
診断先へのヒアリングでは、まず口火を切って会社の沿革や経営状況、業界動向、将来ビジョンなど包括的な質問をおこなう。
そして、各担当ごとに質疑応答をしてもらい、時間配分を考えてヒアリングを進めていく。
ヒアリングから帰ると、各パートごとに現状と課題、提案の方向性のとりまとめを仕切る。
最初の2日間が終了して次回会うまでの各自作業期間も、メールを介して各パートの進捗確認をおこない、内容について助言・コメントをおこなう。
以下にざっくりと、班長さんのお仕事をまとめてみた。
・「経営戦略」担当。診断報告書が全社戦略に従って部門戦略が展開できているかどうか、かじ取りをおこなうのが班長さんの一番大事な仕事だ。
・診断協会の「診断報告書作成要領」にしたがって、「総括提言(診断先への謝辞も含む)」「提言チャート」「重要提言要約総括」「添付資料(EXCEL)」を作成する。
・診断先へのヒアリング、および報告会における進行役を務める。
・班を代表して「実務補習 受講記録」を作成する。
・班を代表して「診断報告書」「受講記録」「アンケート(受講者全員分)を診断協会に提出する。
・診断報告書作成に要したコピー代を精算する。
大体こんなもんかな。
班長になるのを嫌がる人も多いと聞くが、私は楽しかったし、いい経験になったと思う。
知的資産経営に目から鱗
今回の指導員の先生は、森下勉先生。
わが国における知的資産経営の第一人者と言っても過言ではない先生だ。
今はご自身を「知的資産経営の診断士Ⓡ」と名乗っておられる。
しかし、2年前の実務補習当時はそんなお偉い先生とはつゆ知らず・・・
実務補習の2日目、診断先のSWOT分析をしようとした矢先、「そんなんせんでもええよ」とまさかのダメ出し!
教科書通りのSWOT分析をやっても、「強み」が本当に会社の収益に貢献しているのか、あるいは「弱み」が本当に会社のとってマイナス要因なのか判断できない、というのが理由だ。
その代わり、「なぜこの会社はお客に喜んでもらえる商品づくりができているのか?」ヒアリング結果から導き出せ、とのご指示!
そこで、みんなの意見を白板に書き出す。
まず、「お客に喜んでもらえる商品」を支えているのは、「楽しさ」「美味しさ」「品質」への強いこだわりがあるからだ。
そして、例えばその「楽しさへのこだわり」を実現しているのは、他社に真似できないパッケージデザインだとする。
すると、なぜ他社に真似できないパッケージデザインができるのか等、「なぜ」を繰り返して、次々にその要因となる「会社の持ち味」を会社資料やヒアリング結果から抽出する。
こういう作業を続けていくうちに、「みんなに喜んでもらいたい」という経営者の想いが根底にあることに気づく。
ここを出発点として、会社の強みとなる「持ち味」を因果関係で繋げていくと、最終的に「お客に喜んでもらえる商品」というゴールにたどり着く。
これらの因果関係を図で表したものが「価値ストーリー図」だ。
これは、スゴイな!
確かに、SWOT分析して「強み」だけ個別に抽出しても不十分だとわかった。
「強み」を一言でいい表すのは難しいが、お客に提供する価値の向上に繋がる「持ち味」を「価値ストーリー図」で示すと非常にわかりやすい。
「目から鱗が落ちる」とはこのことだ!
これらの持ち味、つまり貸借対照表に表れない資産(例えば、人財、技術力、ブランド力、顧客との関係性など)を「知的資産」ということを知った。
これらの「持ち味」をちゃんと把握して、有効に活用することで、会社の価値向上や他社との差別化を図り、収益向上に結びつけることを「知的資産経営」ということを、森下先生から学んだ。
今回の大阪での実務補習で、森下先生にお会いすることができた。
森下先生に出会えたからこそ、「知的資営」という考え方に巡り会えた。
この出会いが、この後「知的資産経営研究会ひろしま」を立ち上げることに繋がった。
→こちらを参照:知的資産経営研究会ひろしま – 百聞は一献に如かず (men-san.com)
こういう出会いをこれからも大切にしていかんとね。
締めの一杯
出会いと言えば、徳川将軍家の剣術指南役だった柳生宗矩の言葉と言われる「柳生家の家訓」を思い出す。
小才は、縁に出合って縁に気づかず
中才は、縁に気づいて縁を生かさず
大才は、袖すり合うた縁をも生かす
短い人生、「縁」は大いに生かさないと。
今宵は、森下先生と知的資産との出会いに「乾杯!」