5月3日、備前焼の町、岡山県備前市を初めて訪れた。
JRでは、岡山から赤穂線に乗って伊部(いんべ)駅で降りる。
伊部駅は「備前焼伝統産業会館」が併設されており、「備前焼ミュージアム」も隣接している。
駅周辺には多くの窯元や商店、備前焼作家の工房が密集しており、まさに備前焼一色の町だ。
備前焼伝統産業会館は、1階が観光案内所、2階が備前焼の窯元・作家さんの展示即売コーナーになっている。
初めての訪問でどこに行けばいいのかわからなかったので、観光案内所で散策マップをもらって、大体の説明を受けた。
今回の目的は、備前焼の「平盃」を見つけること。
いざ、出陣!
酒器は大事
日本酒を嗜む時、酒器は大切なツールだ。
酒器によって、お酒の「香り」「味わい」「飲み口」が変わってくる。
瀬戸焼は、常滑焼、丹波焼、越前焼、信楽焼とならんで六古窯と言われる焼き物の産地のひとつである。
備前焼は、釉薬(別名:うわぐすり)を使わないので、表面につやはなく、どちらかというとザラザラしている。
とりわけ、陶土を焼しめることで生み出される、素朴でぬくもりを感じる質感が魅力である。
少し値は張るが、こういう酒器で飲むと、お酒が一層美味しく感じるから不思議だ。
ただ、陶土の成分や焼き方により、作品ごとに違った形、色、模様、質感が異なるため、自分の好みの一品を見つけ出すのは一苦労だ。
百貨店だとそんなに迷わないが、こんなに種類が豊富だとなかなか決められない。
自分の決断力のなさに呆れてしまうが、迷う時間もまた楽しい。
平盃を求めて
備前焼の酒器と言えば、ぐい吞が有名だが、なぜ今回は「平盃」なのか?
その理由のひとつとして、平盃は口径が大きいのでお酒の旨味とコクを感じやすくなるという特徴があり、熱燗に適しているということだ。
もちろんぐい吞でも美味しい熱燗は楽しめるが、私は熱燗の場合は平盃で飲むのが好きだ。
また、備前焼の平盃はあまり見たことがなかったので、特に興味がわいたということもある。
とにかく、平盃を探して10軒くらいは回っただろうか。
そして、いろいろ歩き回った結果、中居清さん作の平盃に出会った。
色も形もお手頃な値段も気に入った。
備前焼らしい色と模様。
そのフォルムは、熱燗はもちろんだが、冷酒でもいけそうだ。
どんな平盃なのかは写真を見てもらいたい。
百聞は一見に如かず。
運命の人とやっと出会えたような満足感で一杯だ。
締めの一杯
今回は酒器にこだわった伊部訪問だったが、どうせなら料理を盛りつける皿も備前焼にこだわってみたいと思った。
とにかく、平盃を探すのに必死だったので、皿まで頭が回らなかった。
次回はお皿を求めて伊部に再度訪れてみよう。
今宵は「賀茂鶴 特別本醸造」を熱燗にして、新たにわが家の酒器に加わった平盃に注いで「乾杯!」