賀茂鶴酒造さん(東広島市西条)の「純米吟醸生原酒 青冴え」は、「賀茂鶴チャレンジカップ」の第一弾として2021年に発売された。
「賀茂鶴チャレンジカップ」とは、醸造部員に加え、酒造りの現場とは馴染みの少ない部署からもメンバーを募り、1チーム6~7名で商品の企画から製造、販売までを自分たちで行うプロジェクトのことだ(賀茂鶴酒造ウェブサイトより)。
私も昨年4月に賀茂鶴さんを訪れた際に、生まれたばかりの「青冴え」を購入した。
私のテイスティングノートには、「フルーティーで華やかな香り、やや軽快でなめらかな味わい、旨味の余韻は短く、軽快な酸味が残る」とある。
しかしながら、賀茂鶴さんからの情報によると、今年の「青冴え」は昨年からスペックを変えたとのことである。
昨年の「青冴え」との比較
使用米:八反錦 (山田錦)
精米歩合:60% (同左)
酵母:協会1801号・協会901号のブレンド (協会1801号)
アルコール度:16度以上17度未満 (同左)
日本酒度:+4.0 (+1.0)
酸度:1.4 (1.6)
※( )は昨年の「青冴え」
一番大きな変更は、使用米を変えたこと。
また、日本酒度が高くなっているので、より辛口の方向に変わっているようだ。
あと製造面で昨年と大きく異なるのは、今年はプロジェクトメンバーではなく、本業の醸造メンバーが造られたとのこと。
昨年好評だった「青冴え」をベテランの知識と経験と技で、より完成度の高いお酒に仕上げたということだと理解した。
また、冷蔵中にラベルにシワが入らないよう、耐水性を上げた紙質へ変更したとのことで、ここまで顧客満足を向上させようとする姿勢に感動した。
「一滴入魂」と呑み比べ
昨年の「青冴え」と呑み比べできないので、同社の「純米吟醸 一滴入魂」と呑み比べしてみた。
「純米吟醸 一滴入魂」のスペックは以下の通り。
使用米:八反錦
精米歩合:60%
酵母:協会14号・協会9号のブレンド
アルコール度:15度以上16度未満
日本酒度:+3.0
酸度:1.6
よく見ると、使用米も精米歩合も同じで、出来上がりの日本酒度、酸度も似ていて、どちらもやや辛口の傾向である。
両者の違いは、使用酵母が違うのと、「青冴え」が「生原酒」、「一滴入魂」は「加水・火入れ」であること。
この違いで、実際の味にどれくらい差が生まれるのか?
酒温度は、どちらも10℃くらい。
いざチャレンジ開始。
呑み比べてみた
「純米吟醸 一滴入魂」は、お酒の香りはあまり強く感じない。
キレのある味わいが印象的で軽快な酸味が残る。
一方「純米吟醸生原酒 青冴え」は、一滴入魂よりもほんのりとした吟醸香を感じる。
また、やや短いが旨味の余韻があり、軽快な酸味を感じる。
どちらもやや辛口で、どんな和食でも素材の味を邪魔しないお酒である。
しかしながら、別々に飲めばその違いに気づく人は多くないと思うくらいの差。
個人的には、昨年の山田錦バージョンの方がよりフルーティーな吟醸香があり、旨味も少し強い印象がある。
なので、昨年バージョンのほうが、「一滴入魂」とのポジショニングの違いをアピールしやすいのではないかと感じた。
締めの一杯
呑み比べも無事終わり、あとはお酒を楽しむだけ。
最近は「島谷ひとみさん流呑み方」にならって、一度に3種の日本酒をいただくことにしている。
今宵は贅沢に、「大吟醸 ゴールド賀茂鶴」「純米吟醸 一滴入魂」「純米吟醸生原酒 青冴え」の賀茂鶴吟醸利き酒セットだ。
賀茂鶴さんの「青冴え」の今後の方向性に期待を込めて「乾杯!」